NPSH ( Net Positive Suction Head)
=正味有効吸込ヘッド
ポンプがキャビテーションを起こすか否かの判定基準
となる数値
JIS規格では
「飽和蒸気圧に相当するヘッドを差し引いたNPSH基準面での絶対圧で表示した吸込全ヘッドである。
このNPSHは、NPSH基準面に対して定義され、吸込全ヘッドは、基準面に対して定義される。
NPSH基準面 = 羽根車の翼入口外端の描く円の中心を通る平面。
立軸又は傾斜軸形吸込ポンプの場合は、いずれか高いほうの中心を通る平面である。
製造業者は、ポンプの正確な基準点との関係によってこの面の位置を示すのがよい。」 とあります。
※横型渦巻ポンプの場合、ポンプ吸込口中心面。
ヘッド = 圧力を高さ(m)に換算したもの。
例:0.1Mpa=10.2m
飽和蒸気圧 = ある温度でその液体が沸騰する圧力。
1気圧(760mmHg)では水は100℃で沸騰しますが、
0.5気圧(350mmHg)の高地では80℃ほどで沸騰してしまいます。
圧力が十分に下がれば(20mmHg)常温(20℃)でも水は沸騰します。
ポンプ吸込み側の圧力が、その液体のその温度での飽和水蒸気圧を下回ったとき、その液体は沸騰してしまって楊液できなくなります。
このことにより NPSH とは
「飽和水蒸気圧と吸込圧力の差」を、ポンプ吸込口中心面を基準とし、
ヘッド(m)で表したもの。
とわかります。
NPSH-A とNPSH-R
NPSH-A (-Available) 有効吸込みヘッド
NPSH-R (-Required) 必要有効吸込みヘッド
NPSH-A
NPSH-A ( Net Positive Suction Head -Available )
=有効吸込みヘッド
ポンプによる圧力降下を考えない場合のNPSH
JIS規格では
「定流量に対して、設置条件によって決定される利用可能なNPSH。
ポンプの基準面において、液体がもつ全圧(絶対圧)がその液体のその温度
における飽和蒸気圧(絶対圧)よりいくら
高いかをヘッドで表したもの。」
定流量に対して = ポンプを定格運転しているときの流量に対して
設置条件 = ポンプが取り付けられる工場設備が持っている能力という意味。
このことにより NPSH-A とは
ポンプを定格流量で運転しているとき、工場設備がポンプに与えることができるNPSH
(※各設備に固有の能力)
とわかります。
NPSH-R
NPSH-R ( Net Positive Suction Head -Required)
=必要有効吸込みヘッド
ポンプの運転に重大な支障をきたさないために必要な
NPSH
JIS規格では
「規程吐出し量、回転速度及び楊液において、ポンプが規定性能を達成するために必要な最小NPSHで、
製造業社及び又は供給者によって与えられる。
ポンプのある運転状態において、キャビテーションによる性能低下を
避けるためにポンプとして必要な有効吸込ヘッド。」
型式に固有の能力であり、回転数や流量など運転条件によって変化します。
そのため、ポンプの性能曲線にはNPSH-Rの曲線が記載されています。
このことにより NPSH-R とは
NPSH-Rはポンプの運転に伴う圧力降下の絶対値をヘッドで表したもの
(※ポンプの各型式に固有の能力)
とわかります。
したがって
NPSH-A と NPSH-R の差 = 運転状態における NPSH
であるとわかります
注:NPSH-AとNPSH-Rの値が近いほどキャビテーションが起こりやすくなるため、差は一般的に
1m以上あることが望ましいです。